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【金持ち父さんゼミ#5】スキルがあるほど抜け出せない——「S(自営業)の罠」を受託で働く俺が解剖する

【金持ち父さんゼミ#5】スキルがあるほど抜け出せない——「S(自営業)の罠」を受託で働く俺が解剖する

※本記事にはプロモーションが含まれます。

前回、E・S・B・Iの4つの象限を紹介して、俺が今どこに立っているかを晒した(#4 4つの象限はこちら)。今回はその中のS(自営業)だけを深掘りする。理由は単純で、俺がいちばん深くハマっている象限だからだ。そしてこの罠は、スキルがない人がハマるのではない。スキルがある人ほど深くハマるようにできている。

Sの罠は3行で書ける

『キャッシュフロー・クワドラント』でキヨサキがSに向ける指摘は、この本の中でも一番冷たい部類だと思う。Sは自分のビジネスを「所有」しているのではなく、仕事の方が自分を所有している——自分が止まれば、収入も止まる。

ここまでなら「フリーランスは不安定」というよくある話だ。本書が意地悪なのはその先で、Sは上手くなっても罠から出られないと指摘している点にある。構造はこうだ。

  1. スキルが上がる
  2. 時間あたりの値段が上がる
  3. でも売っている商品は相変わらず「自分の時間」なので、自分が止まれば収入はゼロに戻る

Sとして成長するというのは、檻の内装が豪華になっていくことであって、檻の構造そのものは1ミリも変わらない。単価が2倍になっても「俺が働かないと1円も入らない」は2倍のまま残る。#2で書いたラットレースの自営業バージョンと言ってもいい。あのとき「収入アップは出口ではない」と書いたが、それはEだけの話ではなかった。単価アップもまた、出口ではない

「自分でやった方が早い」が罠の入口

もっと嫌なのは、この罠の入口が美徳の顔をしていることだ。

スキルがある人ほど、こう考える。「人に説明している時間で、自分がやれば終わる」。そして短期的には、これは常に正しい。自分でやった方が実際に早いし、品質も高い。だから任せない。任せないから、仕組みが育たない。仕組みが育たないから、いつまでも自分の手が要る。手が要るから、ますます説明する時間がなくなる。

「自分でやった方が早い」は、その場では毎回正しく、長期では毎回自分を檻に戻す。個別の判断は全部合理的なのに、積み重ねた結果だけが不合理になる。ラットレースと同じ形の、判断の錯視だ。

キヨサキはSの人たちを「完璧主義者が多く、他人の仕事が自分の基準に届かないから任せられない」と評している。耳が痛いを通り越して鼓膜が破れそうだが、事実なので受け取っておく。スキルは檻の外に出る道具にも見えるが、Sの中では檻の鍵を自分で握りしめる理由として機能してしまう。

受託の現場で、罠はこういう顔で現れる

俺は本業とは別に、個人でWebやAI関連の受託をやっている。象限で言えば純度の高いSだ。取引先や金額の話はしないが、働き方の実感なら書ける。

受託の日常は、納期と段取りでできている。受注した瞬間に、未来の自分の時間が売約済みになる。売っているのが時間なので当たり前なのだが、この「当たり前」が積み重なると、カレンダーの数週間先まで自分の稼働が抵当に入っている状態になる。

そしてSの休みには、二重の値札が付いている。休んだ分だけ請求できるものが減り(収入ゼロ)、納期に響けば次の依頼が減る(信用の目減り)。Eなら有給休暇が前者を、会社の看板が後者を吸収してくれる。Sには両方ない。だから休まない。休まないのに、仕組みを作る時間だけはいつも「今じゃなくていい」と後回しになる。納期には締切があり、仕組み化には締切がないからだ。緊急なものが重要なものを永遠に追い越し続ける。これがSの内側から見た景色だ。

ADHDにとって、Sは一番波が荒い象限だと思う

ここからは本に書いていない話をする。

Sの収入は「自分の稼働」と1本の線で直結している。ということは、稼働の波が、そのまま収入の波になる。そして俺の稼働には波がある。過集中が噛み合った週は、1日で3日分進む。噛み合わない週は、着手するまでに3日かかる。体調・気分・興味の残量——そういうものが全部、稼働の変数に入ってくる。

Eの側では、この波を会社が均してくれている。進みが遅い週があっても給料は同じ額で振り込まれる。あれは平準化装置だったのだと、外に出てから分かった。Sを選ぶことは、収入の平準化装置を自分の手で手放すことでもある。波が小さい人なら、手放しても大した問題にならない。波が大きい人ほど、構造的にきつくなる。つまりADHD的な波を持つ人間にとって、Sは相性が一番悪い象限になり得る。スキルの問題ではなく、分散の問題として。

ここで「波をなくそう」という根性論に行くと死ぬ。俺にとって「波をなくせ」は「身長を変えろ」と同じカテゴリの助言だ。何年も自分を観察してきた結論として、波はなくならない。だから作るべきは波を消す精神力ではなく、波が来ても止まらない構造の方だ。

解決は「自分がいなくても動く工程を、1個ずつ作る」

キヨサキの答えはB(ビジネスオーナー)への移動だ。Bの定義は「自分がいなくても回るシステムを所有する人」。ただ、S→Bと聞くと「人を雇って会社を大きくする」を想像して腰が引ける。俺の読み替えはもっと小さい。象限は住所ではなく、工程ごとのグラデーションだと考える。仕事の全部をBにしなくていい。自分が止まっても動く工程を、1個ずつ増やしていけばいい。

実例を出す。このメディアだ。

ブログ運営をSのやり方でやると、ネタ探し・執筆・装飾・入稿の全工程に自分の稼働が要る。波が来たら全部止まる。実際、昔の俺はその形で何度もブログを止めてきた。

今の運営で俺がやる作業は2つだけだ。「ネタをメモ1行書く」ことと、「AIが書いた下書きを判断して直す」こと。記事の下書きはClaude Codeが作り、WordPressへの入稿はスクリプトがワンコマンドでやる(仕組みの中身はこのブログの裏側の記事に全部書いた)。執筆と入稿という「Sの作業」を、自分の稼働から切り離して「Bの部品」に変換した、ということになる。

正直に言っておくと、このメディアの収益はまだ検証中だ。「寝てても稼げるようになりました」とは、まったく言えない段階にいる。ただ、波が来ても止まらないことは、もう検証できた。着手のハードルが「記事を1本書く」から「メモを1行書く」まで下がっているので、調子の悪い週でも工程は前に進む。収入より先に、まず稼働の方が自分から切り離れた。順番としてはこれで合っていると思っている。収入がゼロの仕組みでも、波の日に止まらない仕組みは、波の日に止まる高スキルより強い——Sの内側に何年かいた人間の、これが実感だ。

受託の側でも方針は同じで、議事録の分析や資料の下書きといった定型工程は、すでにAIに渡している。全部は渡せない。判断と責任は最後まで自分に残る。それでも「俺の稼働が要る工程」のリストは、去年より確実に短くなっている。

取るもの・捨てるもの

  • 取る: 「Sは仕事に所有されている」という定義 / 「自分でやった方が早い」を美徳ではなく罠の入口として警戒すること / B=会社を大きくすることではなく「自分がいなくても動く工程の集合」という読み替え
  • 捨てる: 「Sは劣った象限」という読み方。職人として生きる選択自体は本書も否定していない。波が小さい人や、収入を均す資産をすでに持っている人なら、Sのまま完結する人生は普通に成立する。問題は象限の優劣ではなく、自分の波との相性

今日から真似するなら

  1. 自分の仕事を工程に分解して、「自分が1週間止まったら止まる工程」に印をつける。印の数が、あなたのSの純度だ
  2. 印の中から、一番定型的な工程を1個だけ選ぶ。全部やろうとしない。俺たちは全部やろうとした瞬間に着手できなくなる
  3. その1個を「自分がいなくても動く形」に変換する。AIへの指示文でもいいし、手順書でもいいし、人に渡すのでもいい。完成度は6割でいい。6割の仕組みは、波の日のゼロより強い

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次回: BとIに近づくために俺が実際に置いている「仕組み3つ」を晒す。理屈の話は今回で終わり。次は実装編だ。


※本記事は書籍の感想と個人の実践記であり、投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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